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2016.11.9 OTOTOY掲載記事

ラップをフィーチャーするなど急激な変化を経た、馬喰町バンドの驚きの新作、その進化に迫る

わらべうたや民謡、その要素を現代のポップ・ミュージックに溶解させオリジナリティ溢れるサウンドを生み出し続けているトリオ、馬喰町バンド。前作『遊びましょう』から約1年ほどで、新たに新作『あみこねあほい』をリリースした。なんとラップを取り入れるなど、サウンドをガラッと変えながらも、彼らしか作り出せない刺激的なアンサンブルをここでも導き出した。OTOTOYでは本作をハイレゾ配信するとともに、気鋭の音楽ライター、大石始によるインタヴューを敢行した。

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"ゼロから始める民俗音楽"をコンセプトとし、わらべうたや民謡のフィーリングを採り入れた独自のアコースティック・アンサンブルを聴かせてきた3人組、馬喰町バンド。約1年ぶりの新作『あみこねあほい』は、ラップや新たなる自作楽器を大幅に導入した意欲作。ある意味では孤高の存在として独自の道を突き進んできた彼らが現代のシーンと思いもよらぬ形でリンクしたアルバムとも言えるだろう。急激な進化を遂げた新作の内容について、フレットレスの自作弦楽器である六線を操る武徹太郎、ベースの織田洋介、オリジナル打楽器である遊鼓(ゆうこ)担当のハブヒロシに話を聞いた。


『遊びましょう』のツアーで遊んだ結果、こうなった


──前作『遊びましょう』がリリースされたのが2015年9月で、それから約1年での新作リリースというのは結構ペースが早いですよね。

武徹太郎(六線/以下、武):僕らとしても早いと思うんですよ。でも、「出してくれ」というリクエストがあって(笑)。

──誰から?

武 : レーベルから(笑)。自分らとしても無茶だと思うところもあるんですけど、僕自身はつねになにかを作り続けていたいほうだし、出し尽くして死にたいと思ってるぐらいなんで、このペースで作れるのは本望ですね。

──でも、たった1年しか経ってないのに、前作『遊びましょう』と今回の『あみこねあほい』はだいぶサウンドが違う感じがするんですよ。特に大きいのが、大幅にラップが導入されてることで。

武 : 『遊びましょう』のツアーでだいぶ変わったんですよ。毎晩の打ち上げで皿を叩きながら即興で歌っていたら、いつのまにかこうなってました(笑)。


ハブヒロシ(遊鼓/以下、ハブ) : 『遊びましょう』のツアーで遊んだ結果、こうなったという(笑)。

武 : あと、その期間中にいろんな国に行く機会があって、数カ国の人たちが入り混じるような打ち上げも多かったんですね。韓国での打ち上げでは最初、民謡の歌い合いをやってたんですよ。向こうの民謡の節に合わせて日本語で歌ったりしてて。

ハブ : 韓国勢ってすごいんですよ。歌もうまいし、みんないろんな芸能のヴァリエーションを持ってる。

武 : 最初はわらべうたも歌ってみたんですよ。あとはデタラメのパンソリとか。韓国では毎晩そういう打ち上げがあって、そのたびに韓国の友人たちと歌で戦わなきゃいけないわけですよ(笑)。

ハブ ; 日本の芸能者としてなにかできないかと考えるようになったというか。

──そこで浮かび上がってきたのがラップだったわけですか。

武 : そうそう。お前らにはできないラップで勝負してやる! っていう(笑)。


ラップは遊びながら新しいものを作っていける


──そこで日本の伝統芸能を極めていくっていう道もあったわけじゃないですか。日本の語りもので勝負してやる! とはいかなかった。

武 : もちろん日本の伝統芸能には敬意を持ってるし、学んでいきたいとも思ってるけど、習得するのに時間がかかりますからね。打ち上げの場ではまず即興的に勝負しなきゃいけないので。

ハブ : 試しにあっちの伝統のリズムでラップをしたら、みんなすごく驚いたんですよ。そんなのできない!って。ラップはそうやってどんなリズムにも乗せて遊ぶことができるけど、日本の語り芸だとそういうことが僕らには即興的にできなかった。

武 : 遊びながら新しいものを作っていけるんですよね、ラップは。インドネシアに行ってもそのことは実感しましたね。

──韓国なりインドネシアなり、他の民族の人たちと音で「遊ぶ」ときにラップという方法論が適していた、と。

武 : うん、そういうところはありますね。

──そもそもラップはもともと好きだったんですか?

武 : 好きでしたよ。ケンドリック・ラマーとか今のヒップホップも大好きだし。最近はSIMI LABとか日本のヒップホップも聴くようになって。韓国やアフリカの民族音楽に見られるリズムのヨレだとかモタリをポップ・ミュージックに感じることってあんまりないんですけど、ヒップホップを聴いていると、十代のビートメイカーがそういうものをフツーに作っていたりするんですよね。

──無意識のうちに。

武 : そうそう。あと、フリースタイルのMCってそもそも即興じゃないですか。民謡ももともとは即興の音楽で、そのとき思っていることを伝え合う文化だったわけですけど、現代では決まった節を競い合う名人芸の世界になってしまった。だから、ヒップホップと民謡って出てくる音は違うけど、本質的な構造は一緒だと思うんですよ。僕は民謡が本来持っていた即興性の部分が一番好きなんですけど、今それを残している音楽がヒップホップなんだと思う。

──現在活動してるラッパーで自分と近いと思う人っています? ......まさかこんな質問を武くんにすることになるとは思わなかったけど(笑)。

武 : いやー、横からグイッと入ってきた新参者の私が、それ一筋でやってきたラッパーの方々になにか言うというのはあまりにおこがましいですよ(笑)。ただ、SIMI LABと鎮座ドープネス、stillichimiyaは好きですね。KOHHも格好いいと思う。今のヒップホップってこんなことになってるんだ! と思ったのは、チーフ・キーフの"I Don't Like"。すべてのヴァースのキメでひたすら「Don't Like」と繰り返されていて、(岐阜県岐阜県郡上市白鳥町の盆踊りである)白鳥おどりの"シッチョイ"と同じだと思いました。

ハブ : ちょっと呪術みたいな感じだよね。ヴードゥー教みたい。

武 : そうそう、これってラップなの?っていう。

ハブ : 「いつ死ぬかわ~からない」とかね(Dutch MontanaとSALUをフィーチャーしたKOHHの"If I Die Tonight")。

武 : フリースタイル・ダンジョンも大好きなんですよ(笑)。あと、高校生RAP選手権!


宴会を繰り返した結果、ラップという手法がすごくフィットした


──ただ、馬喰町バンドの場合は丸腰の状態でラップをやり始めたわけじゃなくて、わらべうたなどの遊び歌を経由したうえでラップに到達してますよね。そこがものすごく特殊だと思う。

織田洋介(ベース/以下、織田) : 確かに言葉遊びの経験は大きいですね。

武 : (岐阜県郡上市八幡町の盆踊り)郡上おどりの"げんげんばらばら"なんてものすごくラップ的だと思うし、フックで歌がくるヒップホップのトラックって構造的には浪曲にも近いですよね。そういうものを通過したうえでのヒップホップという感覚はありますね、確かに。だからこそ宴会を繰り返した結果、自分たちのなかでラップという手法がすごくフィットするようになっていったんだろうし、気付いたらふだん聴く音楽もヒップホップばっかりになってたんですよ。

──そういう変化を経て、新作『あみこねあほい』でもラップを採り入れようということになったわけですけど、変化という意味では、楽器もだいぶ変わりましたよね。自作楽器である六線は以前からも使用してましたけど、今回はさらにそれを電化したエレキ六線も導入されていて。

武 : 今回は1曲もギターを使ってなくて、全部自作の楽器だけです。『遊びましょう』はあくまでもハーモニーとコードで作られた和声的な音楽だったんですけど、リズム的な平均律からはそれ以前から脱却していたし、旋律の面でも次の段階に行きたいと思っていて。六線はギターのようにフレットがないぶん、めちゃくちゃ演奏が難しいんです。コードなんて絶対弾けない。だから、コーダル(和声的)に展開する曲ができなくなってきたということはありますね。


織田 : 六線はギターみたいに1本だけで完結するような楽器じゃないんで、ベースや太鼓があってはじめて曲が成立するような感じになってきたんですね。ベース自体のやることが変わったわけじゃないけど、アンサンブルのなかでのベースの位置が変わってきたというか。

──自作の六線をエレキ化した理由はなんだったんですか。

武 : あるときに突然「アコースティック、違うな」と思ったんですよ。やっぱり大きかったのが韓国で伝統芸能の演奏家と出会ったことで、そこに自分の生きる道はないと思うようになっちゃって。

──伝統芸能の演奏家と出会うことで、逆に自分がやるべきことが見えてきた?

武 : そうですね。六線も最初アコースティックで作ったんですけど、もっとエグイ音を鳴らしたくなったというか。

織田 : 武さんはもともとベーシストでもあって、アンプで特徴的な音造りをしてたんですね。だから、僕からすると、エレキに戻ってきてるという感覚はありますね。


和声的なフォームだとアップデートし続けられないんじゃないかと


──そういえば、ハブくんのオリジナル打楽器である遊鼓も改良してるんですよね。

ハブ : 遊鼓は自分が歩きながら叩けるように改良してきたんですけど、あまりに大きすぎて、今年の3月にインドに行ったときに持っていけなかったんですよ。インドにはアウトカーストの人たちが叩くパライっていう太鼓があるんですけど、それがまた(朝鮮半島の代表的な打楽器である)チャングのルーツとなるような薄い太鼓で、それを叩きながらジャンプしたり回る芸能もあるんですね。そのパライを参考にして、遊鼓ももっと薄くしたんです。

──前の遊鼓は両面太鼓でしたけど、今のものは片面太鼓ですよね。パライも片面なんですか?

ハブ : そう、パライも片面ですね。最初は両面で叩いてたんですけど、途中から片面にしました。叩き方そのものが違うからすごく大変なんですよ。最近はさらに叩き方もマイナーチェンジしたんで、今日のライヴもヒヤヒヤで(笑)。

──音自体もだいぶ違いますよね。

ハブ : 前の遊鼓の音は気に入っていたんで、そこは悩んだんですよ。まるでダンボールを叩いてるような抜けない音で。いまの遊鼓って抜けが良すぎるので、そこはちょっと改良していかなきゃと思ってます。


──その結果、全体的な音像として混沌としていて、「優しくてオーガニックなアコースティック・アンサンブル」という今までの馬喰町バンドのイメージとはだいぶ変わってきましたよね。もっとドロッとしていて混沌としているというか。

武 : 『遊びましょう』の路線を洗練させていくという方向性もあったと思うんですよ。でも、その路線だと今後アルバムを作り続けていけない気がしたんですね。和声的なフォームだとアップデートし続けられないんじゃないかと思って。


僕はわらべうたのようなラップをやりたいんですよ


──今回の8曲はすべて『遊びましょう』以降に作った曲なんですか。

武 : そうですね。ただ、歌詞はギリギリまで悩みましたね。もともと歌詞に手こずるほうだけど、ラップって普通の歌の5倍ぐらい歌詞を書かないと成立しないんですよ。だから、本当に書いても書いても終わらなくて(笑)。1MCでアルバム一枚を作るラッパーって凄いと思いますよ。

──フリースタイルでラップするのと、ひとつの楽曲としてリリックを書くというのは、同じラップでも全然違いますよね。

武 : 全然違いました。フリースタイルはそのときのテンションで盛り上げられるけど、それをそのまま曲にしても面白いとは限らない。あと、ラッパーって自分のなかに言いたいことがあってラップという手法を選んでる人が多いと思うんですけど、俺はどちらかというと対局というか。

──メッセージありき、ではない?

武 : わらべうたみたいな言葉遊びや語感の部分が好きなんですよね、僕は。もちろん、メッセージと共存させることができれば一番ですけど、僕はわらべうたのようなラップをやりたいんですよ。

──いまの馬喰町バンドの方向性だと、音で一緒に遊ぶ相手も無限ですよね。それこそ韓国や日本の伝統芸能の人ともできるし、ラッパーともできる。それこそ武くんも好きだという鎮座ドープネスあたりだったらすぐにセッションが成立しそう(笑)。

武 : やれたらいいですね。stillichimiyaもちょっとわらべうたっぽい曲があるし、すごくおもしろいですよね。

──だからこそ、今後の馬喰町バンドはどこに向かっていくかわからない感じがあるし、『あみこねあほい』を聴いているとワクワクしてくるんですよ。今後の馬喰町バンドはどこに向かっていくんでしょう?

武 : もしかしたら少しドロッとしていくかもしれないですね。あと、もっと民族楽器を取り入れたいとも思っていて。最近のライヴでは尺八も入れているんですけど、僕らがこういうワンループの演奏になっていくと、その上に尺八が入るだけでちょっとジュラシック5みたいな感じが出てくる(笑)。銅鑼を使ってもいいかなというのもあるし、やりたいことは色々ありますね。

April 5, 2017 - interview by 大石始 
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